十勝・道東ドライブ旅の始まり
前日は札幌で北大祭を満喫したあと、特急おおぞらに乗って十勝の中心都市・帯広へ移動。夜は「北の屋台」や「十勝乃長屋」を巡り、十勝ならではのグルメを堪能しました。
そして旅はいよいよ二日目。
今日は、この旅最大の目的の一つである旧国鉄士幌線の遺構「タウシュベツ川橋梁」を目指します。
今回は、雄大な十勝平野を駆け抜け、十勝北部・上士幌町から東大雪へ。幻の橋「タウシュベツ川橋梁」をはじめ、北海道ならではの大自然と絶景を巡ります。
ユーチューブで旅の模様をUPしています。
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雨の帯広を出発
AM8:00
朝、ホテルの外へ出ると、帯広の空はあいにくの雨。
駅前に設置された温度計は10℃を表示しており、6月とは思えない肌寒さです。
北海道らしい爽やかな青空を期待していただけに少し残念ですが、雨に煙る十勝の景色もまた旅ならでは。
気持ちを切り替え、まずはレンタカーを借りに向かいます。
今回利用したのはトヨタレンタカー。
借りた車はコンパクトカーのルーミーです。
4人での移動でも十分な室内空間があり、今回のような十勝・道東ドライブにはちょうど良いサイズです。
AM8:30
準備を終え、いよいよ出発です。
まず目指すのは、上士幌町にある道の駅かみしほろ。

その途中、せっかくなので十勝を代表する景勝地へ立ち寄ることにしました。
向かったのは、音更町にある十勝牧場白樺並木です。

帯広駅前から約16km、車でおよそ25分。
市街地を抜けて十勝川を渡ると、景色は一変。
広大な畑と真っすぐ伸びる道路、そしてどこまでも続く空。
北海道らしい雄大な風景が目の前いっぱいに広がります。
十勝を代表する絶景「白樺並木」
AM9:00
十勝牧場白樺並木に到着しました。
約1.3kmにわたって一直線に続く白樺並木は、音更町の「美林」に指定されている十勝を代表する景勝地です。
四季折々で異なる表情を見せ、映画やテレビドラマのロケ地としても数多く利用されてきました。
NHK連続テレビ小説『マッサン』のロケ地としても知られています。
この白樺並木がある十勝牧場は、1909年(明治42年)に種馬牧場として開設された歴史ある牧場で、総面積は約4,100ha。
現在も家畜改良センター十勝牧場として利用されているため、放牧地などへの立ち入りはできませんが、白樺並木や展望台へ続く道路は一般開放されています。
実は私も3年前、一人旅でここを訪れ、展望台まで足を延ばしました。
あのときの雄大な景色が忘れられず、今回は家族にもぜひ見てもらいたいと思い、再び立ち寄ることにしました。
白樺並木は車で通り抜けることができます。
未舗装の砂利道をゆっくり進むと、タイヤが小気味よく砂利を踏みしめる音が車内に響きます。
舗装道路とは違う少し揺れる乗り心地も、北海道らしい大自然の中を走っていることを実感させてくれました。
ここから旅はいよいよ、上士幌町、そして幻の橋・タウシュベツ川橋梁へと続いていきます。
タウシュベツ川橋梁への鍵「道の駅かみしほろ」
AM9:30
上士幌町の中心部にある道の駅かみしほろへ到着しました。
ここは地元の特産品やグルメが楽しめる人気の道の駅ですが、私たちにとっては今回の旅で最も重要な立ち寄りスポットでもあります。
その理由は、この先にあるタウシュベツ川橋梁へ向かうための「林道ゲートの鍵」を借りることができる場所だからです。
タウシュベツ川橋梁は、展望台から遠望する方法やガイドツアーに参加する方法など、いくつかの見学方法があります。
その中でも今回は、**自分たちの車で橋の近くまで行ける「林道ゲートキー貸出制度」**を利用することにしました。
橋を間近で見られることに加え、自分たちのペースで見学できるのが、この方法最大の魅力です。
道の駅へ到着すると、まず向かったのは建物奥にある観光案内所。
入口には長靴がずらりと並び、熊鈴も用意されています。
その光景を目にしただけで、「いよいよ秘境へ向かうんだ」という期待が一気に高まります。
受付で予約していたことを伝えると、スタッフの方から林道の状況や注意事項について丁寧な説明を受けます。
橋周辺はヒグマの生息地でもあるため、熊鈴の携帯や複数人での行動など、安全面についてもしっかり案内していただきました。
説明を聞いていると、これから向かう場所が観光地というより、大自然の中に残された貴重な鉄道遺構であることを改めて実感します。
説明を終えると、いよいよ林道ゲートの鍵を受け取ります。
この鍵を借りられるのは、1日わずか15組限定。
利用には事前予約が必要で、人気のシーズンには数週間先まで予約が埋まることもあるそうです。
料金は1人2,000円。
一見すると少し高く感じるかもしれませんが、この協力金は林道の維持管理やタウシュベツ川橋梁の保全活動などに充てられています。
貴重な鉄道遺産を未来へ残していくための費用と考えれば、十分納得できる内容だと感じました。
必要な手続きを終え、無事にゲートキーを受け取りました。
観光案内所では長靴や熊鈴も貸し出されています。
橋の近くはぬかるみになっていたり、湖の水位によっては浅瀬を歩くこともあるため、長靴はほぼ必需品。
私たちも必要な装備を整え、出発準備は万全です。
それにしても、ここまで準備をしてから向かう観光地は、そう多くはありません。
鍵を借りなければ入ることのできない林道。
限られた人数しか立ち入ることのできないエリア。
そんな特別感も、この場所ならではの魅力なのかもしれません。
本当なら、この道の駅もゆっくり見て回りたいところ。
人気ベーカリーや地元食材を使ったレストランなど、魅力的なお店も数多くあります。
しかし、それは橋を見学したあとの楽しみに取っておくことにしました。
今は何よりも、一刻も早くタウシュベツ川橋梁へ向かいたい気持ちでいっぱいです。
荷物を車へ積み込み、エンジンを始動。
いよいよ、この旅最大の目的地へ向けて出発します。
この先に待っているのは、季節によって湖底へ姿を消し、年々崩落が進むことから「幻の橋」と呼ばれるタウシュベツ川橋梁。
果たして今日は、どんな姿を見せてくれるのでしょうか。
幻の橋を生んだ「旧国鉄士幌線」の歴史
タウシュベツ川橋梁へ向かう前に、この橋が造られた旧国鉄士幌線の歴史を少しご紹介します。

士幌線は、帯広駅から十勝三股駅まで、およそ78kmを結んでいた国鉄の路線です。
1925年(大正14年)に帯広~士幌間が開業。その後、路線は少しずつ北へ延伸され、1939年(昭和14年)には終点・十勝三股駅まで全線が開通しました。
沿線で伐採された木材の輸送や、開拓地に暮らす人々の生活を支える交通機関として、この地域の発展に大きく貢献した路線です。
しかし、その歴史は長くは続きませんでした。
1955年(昭和30年)、発電を目的とした糠平ダムの建設により、この一帯はダム湖となることが決定します。
そのため、現在のタウシュベツ川橋梁を含む区間は湖底へ沈むことになり、線路は新しいルートへ付け替えられました。
こうしてタウシュベツ川橋梁は、完成からわずか16年ほどで鉄道橋としての役目を終えることになったのです。

その後も士幌線は営業を続けましたが、モータリゼーションの進展や人口減少の影響を受けて利用者は減少。
1978年には糠平~十勝三股間が廃止され、1987年(昭和62年)3月22日、国鉄分割民営化を目前に控えた日に士幌線は全線廃止となりました。
現在、沿線には数多くのコンクリートアーチ橋が残されており、その中でもタウシュベツ川橋梁は、季節によって湖面から姿を現したり、水没したりを繰り返すことから、「幻の橋」として全国的に知られています。
さらに、北海道の厳しい自然の中で凍結と融解を何十年も繰り返してきたことで老朽化が進み、今も少しずつ崩落が続いています。
だからこそ、この橋の姿は二度と同じ形では見ることができません。
まさに”今、この瞬間だけ”の景色なのです。
歴史を頭に入れたところで、いよいよ橋へ向かいます。
道の駅かみしほろを出発して20分ほど。
国道273号線は、広大な十勝平野を離れ、徐々に東大雪の山々へと入っていきます。
道路は音更川に沿って北上しますが、この川沿いをかつて並行して走っていたのが旧国鉄士幌線です。
沿線には第三音更川橋梁や第二音更川橋梁など、今も鉄道遺構が静かに残されています。
車窓からその姿を探しながら走るのも、このルートならではの楽しみの一つです。
やがて右手に巨大なコンクリートダムが姿を現しました。

これが糠平ダム。
このダムの完成によって糠平湖が誕生し、タウシュベツ川橋梁は湖へ沈む運命をたどることになりました。
一つのダムが地域の風景だけでなく、鉄道の歴史までも大きく変えた——。
そんなことを思いながら、私たちは目的地へ向けて車を走らせました。
林道の先に待つ「幻の橋」へ
ぬかびら温泉郷を抜け、国道273号線をさらに北上します。
やがて音更川に架かる丸山橋を渡ると、すぐ右手に林道の入口が現れました。
ここから先は、一般車は立ち入ることのできない特別なエリアです。
車を降り、道の駅で受け取ったゲートキーを鍵穴へ差し込みます。
ガチャリ――。
重いゲートをゆっくり開けると、いよいよ冒険の始まりです。
ゲートの向こうには、普段見ることのできない景色が広がっていると思うと、自然と胸が高鳴ります。
再び車へ乗り込み、林道へと進みました。

橋の近くまでは、およそ2〜3km。
距離はそれほど長くありませんが、未舗装の砂利道が続くため、ゆっくり慎重に進んでいきます。
道幅は車一台がやっと通れるほど狭く、急なカーブやアップダウンも少なくありません。
場所によっては崖沿いを走る区間もあり、対向車が来ないことを願いながらハンドルを握ります。
タイヤが砂利を踏みしめる音だけが静かな森に響き、街の喧騒はもうどこにもありません。
聞こえてくるのは、鳥のさえずりと木々を渡る風の音だけ。
普段のドライブでは味わえない、北海道の大自然の中へ入り込んでいく感覚が心地よく感じられます。
途中、林道脇には真っすぐ延びる築堤のような地形が見え隠れしました。
かつてこの場所を列車が走っていた旧国鉄士幌線の線路跡です。
今では草木に覆われていますが、その姿からは、ここに鉄道が走っていた当時の面影を感じ取ることができます。
歴史の舞台へ少しずつ近づいている――。
そんな気持ちで林道を進みました。
15分ほど走ると、前方に多くの車が停まる広場が見えてきました。
車で進めるのはここまでです。

鳥の鳴き声と風に揺れる木々の音だけが聞こえてきます。
ここから先は徒歩で橋を目指します。
距離はおよそ100m。
とはいえ、この一帯はヒグマの生息地でもあります。
熊鈴を鳴らしながら、周囲の様子を確認しつつ慎重に歩いていきます。
森の中を抜けると、視界が少しずつ開けてきました。
そして目の前に現れたのは、崩壊が進む11連アーチのコンクリート橋。静寂に包まれた森の中で、まるで時が止まったかのように佇んでいます。降り続く雨と薄く立ち込めた霧が、その姿をいっそう幻想的に演出し、思わず息をのむ光景が広がっていました。
これが、長い年月を経てなお静かに佇む旧国鉄士幌線の遺構、**幻の橋「タウシュベツ川橋梁」**です。
古代ローマの水道橋を思わせる美しいアーチは、北海道遺産にも選定されている「旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋梁群」を代表する存在として、多くの人を魅了しています。
せっかくなので、橋の近くまで歩いてみることにしました。
足元はぬかるみが多く、長靴がなければ近づくのは難しい場所もありますが、その分、間近で見上げる橋の迫力は格別です。
高さのあるコンクリートアーチを見上げると、90年以上もの歳月を耐え抜いてきた重厚な存在感がひしひしと伝わってきます。
しかし、その美しい姿とは裏腹に、橋は今も少しずつ崩壊が進んでいます。
糠平湖の水位変化による水圧や、冬の結氷・融解を繰り返す北海道特有の厳しい自然環境によって、コンクリートは少しずつ傷み、損傷が拡大しています。
2003年の十勝沖地震では中央部の側壁が崩落し、その後も各所で崩落が確認されるなど、橋の老朽化は年々進行しています。
現在、この橋を積極的に保存する計画はなく、北海道遺産に選定されているアーチ橋梁群の中でも、立地条件や維持管理の難しさから保存対象には含まれていません。
だからこそ、今目の前にあるこの姿は、二度と同じ形では見ることのできない貴重な風景です。
いつの日か自然へと還ってしまうかもしれない――。
そんな儚さを感じながら見上げるタウシュベツ川橋梁は、美しさだけでなく、どこか切なさも漂わせていました。
橋を見たあとだから面白い「ひがし大雪自然館」
AM11:20
タウシュベツ川橋梁を後にし、再び道の駅かみしほろへ向かいます。
まずは借りていた林道ゲートキーを返却するため、国道273号線を戻ることにしました。
その途中、ぬかびら温泉郷にある**「ひがし大雪自然館」**へ少し立ち寄ってみます。
ひがし大雪自然館は、大雪山国立公園・東大雪地域の自然や歴史、地域の魅力を紹介するビジターセンターです。
館内には、糠平湖や音更川水系に生息する魚や水生昆虫の水槽展示をはじめ、ヒグマやエゾシカ、シマフクロウ、オオワシなど北海道を代表する野生動物の剥製が数多く展示されています。
さらに、高山植物や森林の生態系を再現したジオラマ、世界の昆虫標本、旧国鉄士幌線の歴史やタウシュベツ川橋梁に関する展示など、東大雪の自然と歴史を幅広く学べる内容となっています。
橋を見学したあとだったこともあり、士幌線の歴史や当時の映像には思わず見入ってしまいました。
「少しだけ立ち寄るつもり」が、気がつけば約50分。
予想以上に見どころが多く、時間を忘れて楽しめる施設でした。
ひがし大雪エリアを観光する際には、ぜひ前後に立ち寄っていただきたい施設です。東大雪の自然や歴史を知ることで、この地域の魅力をより深く感じられると思います。
道の駅かみしほろでランチタイム
PM1:00
道の駅かみしほろへ戻り、無事に林道ゲートキーを返却。
ようやくお待ちかねのお昼ご飯です。
昼食は、道の駅内にあるレストラン「La Table de KAMISHIHORO」へ。
私はボリューム満点の三元豚のカツカレーを注文しました。
歩き回ったあとの温かいカレーは格別。
旅先で食べるご当地ランチは、やはり旅の大きな楽しみの一つですね。
食後は、せっかくなので道の駅をゆっくり散策。
ベーカリー「トカトカ」には焼きたてのパンが並び、ハンバーガーショップ「tobachi」では上士幌町ならではの食材を使った人気メニューが味わえます。
物産コーナーには十勝・上士幌の特産品やお土産が充実しており、見ているだけでも楽しめます。
そしてデザートは、「THE SANDO」の濃厚なソフトクリーム。
北海道産ミルクの風味がしっかり感じられる、旅の締めくくりにぴったりの一品でした。
さらに館内には、旧国鉄士幌線やタウシュベツ川橋梁に関する展示も充実しています。
これから橋を見に行く人はもちろん、見学を終えたあとに立ち寄れば、橋の歴史や背景をより深く知ることができるでしょう。
道の駅という枠を超え、観光・グルメ・ショッピング・学びが一度に楽しめる施設。
上士幌町を訪れたら、ぜひ立ち寄っていただきたいおすすめのスポットです。
さてここからは再び車を走らせ、十勝をさらに東へ。
次に目指すのは、阿寒湖。
十勝平野を抜け、さらに大自然の奥へと進んでいきます。
果たして、この先にはどんな景色が待っているのでしょうか。




























































