新幹線や特急列車、観光列車を乗り継ぎながら、日本海側を北へ北へと進んできた「日本海縦貫から北海道への旅」。
姫路駅を出発してから、北陸路、日本海沿いの絶景、そして五能線を経て、ついに北海道へ上陸しました。

前回は異国情緒あふれる函館の街並みや歴史ある洋館、函館山から望む夜景、そして北海道グルメを満喫。
いよいよ今回がシリーズ最終章です。
函館郊外のトラピスト修道院、桜が満開を迎えた五稜郭、そして旅の締めくくりとなる特急北斗。
日本海縦貫旅、最後の一日をお届けします。
最後までどうぞお付き合いください。
▲今回の旅の様子はYouTubeでも公開しています。
鉄道旅とあわせて、北海道の風景や旅の空気感もぜひ動画でお楽しみください。
トラピスト修道院へ 函館郊外の静寂に包まれる
カーシェアで北斗市へ
函館駅前のトヨタレンタカーに併設されたカーシェアを利用して、まずは函館湾沿いを西へ約25km。
今回向かうのは、北海道北斗市にある「トラピスト修道院」です。
函館周辺には女子修道院である「トラピスチヌ修道院」がありますが、今回向かうのは1896年(明治29年)に創設された日本最初の男子トラピスト修道院。
厳しい戒律のもと祈りと労働を大切にしながら共同生活を送り、トラピストバターやクッキーなどでも広く知られています。
北海道らしい雄大な景色の中に佇む、静寂と祈りの空間。
以前から一度訪れてみたいと思っていた場所です。
AM10:50 函館を出発。
函館湾沿いを走りながら、約40分ほどで目的地が近づいてきました。
海沿いから緩やかな坂道を登っていくと、やがて長く続く並木道の先に赤レンガの建物が見えてきます。
ついに到着です。
並木道の先に広がる静寂の空間
トラピスト修道院の見学エリアは、正門周辺や並木道、売店、展示スペースなど囲壁の外側が中心。
修道士の方々が現在も生活を送る場所であるため、内部を自由に見学する施設ではありません。
「見せてもらう」のではなく、静かに訪ねる。
そんな気持ちで歩くのが、この場所にふさわしいように感じます。
大きな声で話したり、生活空間をのぞき込んだりすることは避け、静寂を楽しみながら散策することにしました。
まずは駐車場から、まっすぐ伸びるポプラと杉の並木道へ。
緩やかな坂道の先に見える赤レンガの建物が、まるでヨーロッパの修道院のような雰囲気を醸し出しています。
日本最初の男子修道院の歴史
トラピスト修道院の正式名称は「灯台の聖母トラピスト大修道院」。
1896年(明治29年)、フランス人修道士ジェラール・ゲッセ神父らによって創設された、日本初の男子トラピスト修道院です。
現在もトラピスト会の修道士たちが共同生活を送り、祈りと労働を中心とした修道生活を続けています。
なお、函館市内には女子修道院である「トラピスチヌ修道院」があり、こちらとは男女それぞれ別の修道院として運営されています。今回の旅では北斗市にある男子修道院を訪れましたが、函館観光とあわせて両方を巡る方も多いようです。
開拓期の北海道では、自給自足を基本とした修道生活を送りながら農業や酪農にも取り組み、その活動は地域の発展にも大きく貢献しました。
また、ここで作られるトラピストバターやクッキー、バター飴は北海道を代表する名産品として広く親しまれ、多くの観光客がお土産に買い求めています。

正門から眺める修道院の風景
ゆっくりと並木道を登り、正門前までやってきました。
目の前には赤レンガ造りの修道院と、美しく整えられた庭園。
その向こうには津軽海峡が静かに広がり、北海道らしい雄大な景色が目に飛び込んできます。
派手な観光施設ではありません。
しかし、長い年月をかけて祈りが積み重ねられてきた場所ならではの凛とした空気が流れ、門の前に立つだけでも自然と背筋が伸びるような気持ちになりました。
静かに時間が流れるこの空間こそ、この修道院最大の魅力なのかもしれません。
名物のトラピストソフトをいただく
再び坂道を下り、売店へ。
ここでぜひ味わっておきたかったのが、名物のトラピストソフトクリームです。
トラピストバターを贅沢に使用した特製ソフトクリームは、濃厚でコクがありながら後味は意外とさっぱり。
トッピングされた手作りビスケットも良いアクセントになっていて、とても美味しい一品でした。
料金は400円。
券売機でチケットを購入し、カウンターで受け取ります。
売店では定番のトラピストクッキーやバター飴なども販売されており、お土産選びも楽しめます。
気軽に立ち寄れる癒しのスポット
正門前まで歩いて景色を眺め、売店で買い物を楽しむだけなら30分ほど。
並木道をゆっくり散策し、展示スペースなども見学するなら1時間ほどあれば十分満喫できます。
華やかな観光地とは違いますが、静寂に包まれたこの場所には、不思議と心を落ち着かせてくれる魅力があります。
函館観光の途中、少し足を延ばして訪れる価値のあるスポットだと感じました。
満開の桜に包まれた五稜郭へ
AM12:10
北斗市から函館市内へ戻り、続いて訪れたのは函館を代表する観光名所・五稜郭です。
予想どおり周辺は大勢の観光客や花見客で大賑わい。
出店も数多く並び、まさに函館の春を象徴するような活気に包まれていました。
この日は約1,500本の桜がちょうど満開。
「今日が一番の見頃」と言われても納得できるほど、美しい景色が広がっていました。
五稜郭は、江戸時代末期に北方防衛と箱館開港に備えて築かれた、日本初の西洋式星形城郭です。
幕末には旧幕府軍の拠点となり、戊辰戦争最後の戦い「箱館戦争」の舞台としても知られています。
現在は国の特別史跡に指定され、春には北海道屈指の桜の名所として多くの観光客が訪れます。
では満開の桜を眺めながら、まずは五稜郭タワーへ向かいましょう。
ここでも昨日購入した「はこだてスペシャルチケット2026」を利用。
4ポイントを使い、これで12ポイントをすべて使い切ることができました。
函館市電も含めて考えると、しっかり元は取れたと思います。
館内へ入ると、やはり長蛇の列。
エレベーター待ちの行列に並び、地上90mの展望フロアへ向かいます。
現在の五稜郭タワーは2006年に完成した高さ107mの展望タワー。
展望台からは五稜郭の星形全体を一望することができ、函館山や津軽海峡までも見渡せます。
眼下に広がる五角形の城郭は、幕末の動乱の舞台となった場所。
1868年、戊辰戦争最後の戦いとなる箱館戦争では、榎本武揚や土方歳三率いる旧幕府軍がここを拠点として新政府軍と戦いました。
その後、旧幕府軍は降伏し、箱館戦争は終結。
日本は近代国家への道を歩み始めることになります。
そして、眼下に広がる満開の桜。
星形の城郭を囲むように咲き誇る薄紅色の景色は圧巻の一言。
こればかりは実際に見てみないと伝わらない美しさです。
「この時期に函館へ来て本当に良かった」
そう思わせてくれる絶景でした。
五稜郭公園を散策
せっかくなので、今度は地上へ降りて五稜郭の内部を歩いてみることにします。
園内の中心部には、2010年に復元された箱館奉行所があります。
幕末に江戸幕府が北方防衛と対外交流の拠点として設置した役所で、箱館戦争では旧幕府軍の本陣としても使われました。
今回は内部見学こそしませんでしたが、堂々とした建物は見応え十分。
当時の姿を忠実に再現しているそうで、幕末ファンにはたまらないスポットでしょう。
奉行所前では、浅葱色に白いだんだら模様の羽織がずらり。
刀などの小道具も用意されており、新選組の隊士姿で記念撮影ができるようです。
土方歳三ゆかりの地ならではの光景ですね。
さて、気が付けば時刻は午後1時半。
そろそろカーシェアを返却し、函館駅前へ戻ることにしましょう。
最後の函館グルメ ハセガワストアへ
PM2:00
最後に立ち寄ったのは、函館市民のソウルフードとして知られる「ハセガワストア」。
1978年創業のコンビニエンスストアで、店内で焼き上げる名物「やきとり弁当」が人気です。
とはいえ、実際に使われているのは豚肉。
道南地方では豚串のことを「やきとり」と呼ぶ文化があり、これもまた函館ならではの食文化です。
函館に来たら、ラッキーピエロと並んで絶対に外せないスポット。
今回は「やきとり弁当(大)」を塩だれで注文。
さらに「やきとりビール」も購入し、特急北斗の車内でいただくことにしました。
新函館北斗駅から最後の鉄路へ
PM2:14
函館駅から快速はこだてライナーに乗車。
いよいよ函館ともお別れです。
車窓から函館の街並みを眺めながら、新函館北斗駅へ向かいます。
PM2:40 新函館北斗駅に到着。
ここから再び長距離片道切符の旅が再開です。
乗車する特急北斗の発車時刻は15時20分。
約40分ほど時間があるので、新函館北斗駅周辺を少し散策してみることにしました。
新函館北斗駅は、北海道新幹線開業に合わせて誕生した道南の玄関口。
かつての渡島大野駅を改称し、2016年から北海道新幹線の始発駅として重要な役割を担っています。
駅構内には北海道の特産品を扱う店舗や観光案内所があり、道南観光の拠点として整備されています。
駅前に出てみると、大きなロータリーが広がり開放感は抜群。
一方で、その広さに対して人影は少なく、どこか静かな雰囲気です。
函館市内へ向かうバスや木古内方面への路線バスも発着していますが、本数はそれほど多くなく、利用の際は事前確認が必要そうです。
駅前には北海道出身の歌手・三橋美智也の記念碑や、旧渡島大野駅時代の油庫、さらに上磯町の峩朗鉱山から産出された石灰石なども展示されており、新幹線駅としてだけではない歴史を感じることができました。
さて、特急北斗で旅のフィナーレへ
最後の特急列車「北斗」に乗車
いよいよ今回の旅、最後の特急列車に乗車する時がやってきました。
PM3:20
ホームへ滑り込んできた特急北斗に乗り込み、新千歳空港へ向けて最後の鉄路を走ります。
車内へ腰を下ろすと、まずは函館駅近くのハセガワストアで購入してきた名物「やきとり弁当」を広げることに。
さらに、お店で見つけた「やきとりBeer」も一緒にいただきます。
旅の締めくくりに、函館ならではの味覚を車内で楽しめるとは何とも贅沢です。
今回選んだのは「やきとり弁当(大)」。
大ぶりの豚串が4本、ご飯は350gと食べ応え十分です。
味付けは数種類ある中から「塩だれ」をチョイスしました。
香ばしく焼き上げられた豚串に、旨味たっぷりの塩だれ。
そのタレが海苔とご飯によく絡み、一口、また一口と箸が止まりません。
そこへ「やきとりBeer」を流し込むと相性は抜群。
車窓を楽しもうと思っていたはずが、あまりの美味しさに夢中になってしまいました。
ふと顔を上げると、窓の外には大沼国定公園の穏やかな景色。
大小さまざまな湖沼が点在し、その向こうには北海道らしい雄大な自然が広がっています。
列車旅ならではの景色と駅弁。
やはり、この時間が一番幸せなのかもしれません。
駒ヶ岳を望む雄大な車窓
やがて視界が大きく開けると、北海道を代表する名峰・駒ヶ岳が雄大な姿を現しました。
特徴的な山容は遠くからでも存在感があり、北海道らしい景色を象徴する山のひとつです。
実は現在走っている函館本線は、大沼駅から駒ヶ岳を迂回するように右ルートと左ルートへ分かれています。
特急北斗が走るのは左ルート。

このように路線が分かれているのは、駒ヶ岳周辺の急勾配を緩和するためです。
実は同じような分岐は七飯駅から大沼駅の間にもあります。
こちらは「藤城支線」と呼ばれ、かつて蒸気機関車が急勾配を避けるために造られたルート。
北海道新幹線開業後、多くの特急北斗は新函館北斗駅を経由する本線を走行し、現在では藤城支線は貨物列車や一部普通列車が利用しています。
現在のディーゼルカーなら難なく登れる勾配でも、蒸気機関車にとっては大きな難所。
こうした鉄道の歴史が、今も路線の形として残されているのは興味深いですね。
車窓右手には、いつまでも駒ヶ岳が寄り添うように姿を見せてくれました。
まるで今回の旅を最後まで見送ってくれているようです。
名物駅弁の街を通り抜ける
PM3:50
列車は「いかめし」で有名な森駅へ到着します。
森駅名物の「いかめし」は1941年に誕生した北海道を代表する駅弁。
小ぶりなイカにもち米を詰め、秘伝の甘辛いタレでじっくり炊き上げた逸品で、80年以上にわたり旅人に親しまれています。
駅弁として有名ですが、駅前にある柴田商店でも購入できるため、途中下車して買いに行く鉄道ファンも少なくありません。
森駅を出発すると、列車は穏やかな内浦湾に沿って進みます。
PM4:08 北海道で唯一、太平洋と日本海の二つの海に面する町・八雲へ到着。
さらに列車は、駅弁「かにめし」で全国的に有名な長万部駅へ。
森駅の「いかめし」、長万部駅の「かにめし」。
北海道を代表する二大駅弁の町を続けて通過するのも、このルートならではの楽しみです。
そして長万部から列車は室蘭本線へ入ります。
北海道を代表する沿線の街を走る
長万部を出ると、ほどなく全国屈指の秘境駅として知られる小幌駅を通過します。
小幌駅は「礼文華山トンネル」と「新辺加牛トンネル」の間に挟まれた、わずかな明かり区間に設けられた駅。
三方を急斜面に囲まれ、残る一方は内浦湾。
道路は一切通じておらず、鉄道か船でしか近づけない、日本でも屈指の秘境駅として知られています。
現在、駅周辺には集落もなく、人の暮らす気配はありません。
列車で通過するほんの数十秒ですが、その独特な立地には思わず目を奪われます。
その後、洞爺湖の玄関口・洞爺駅、歴史ある城下町として知られる伊達紋別駅を経て、PM5:21、室蘭市の玄関口・東室蘭駅へ到着しました。
室蘭は、日本有数の製鉄業によって発展してきた工業都市。
室蘭港を中心に、北海道の産業を支えてきた街です。
東室蘭を境に線路は複線電化区間となり、列車本数も増えてきます。
さらに列車は、登別温泉の玄関口・登別駅、アイヌ文化の拠点・白老駅、北海道最大級の港町・苫小牧駅へと停車しながら、旅の終着点へ近づいていきます。
日本海縦貫旅、ついにゴールへ
PM6:15
列車は南千歳駅へ到着しました。
今回使用した長距離片道切符は札幌市内まで有効ですが、旅程の都合上、今回はここで途中下車。
ここから快速エアポートに乗り換え、新千歳空港へ向かいます。
そして最後は、最終便のスカイマークで神戸空港へ。
姫路を出発して日本海側を北上し、北陸新幹線、特急いなほ、リゾートしらかみ、北海道新幹線、函館ライナー、そして特急北斗。
数え切れないほどの列車を乗り継ぎ、多くの絶景や街、人との出会いに恵まれた3日間でした。
一枚の長距離片道切符から始まった今回の旅。
改めて鉄道旅の奥深さと、日本にはまだまだ訪れてみたい場所が数多くあることを実感しました。
また新しい切符を手に、まだ見ぬ景色を求めて旅に出たいと思います。
最後までご覧いただき、本当にありがとうございました。































































































